今月のコラム  
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003:「船橋焚書事件」最高裁判決メモ(一部抜粋)
    

 「船橋焚書事件」弁護団 (弁護団長 内田 智)

         

平成17年7月14日

                                                                       

事案の概要

 今から4年前、「つくる会」が主導した歴史・公民教科書の採択が中国・韓国から不当な内政干渉を受けており、国内の過激派が各地の教育委員を脅迫して同教科書の採択妨害をしていた(中核派は「つくる会」事務所に対しても放火テロを実行した)時期の思想史的に異常な、しかし決して見逃すことのできない重大な出来事である。平成13年8月10日から同月26日にかけて、船橋市西図書館に勤務していた土橋悦子司書(「原告つくる会を嫌悪していた」)は、「市が定めた(図書館資料)除籍基準を無視し、個人的な好き嫌いの判断によって大量の図書館の蔵書を除籍し廃棄して船橋市の公有財産を不当に損壊した」、同行為は「周到な準備をした上で計画的に実行された行為であった。船橋市は同司書に対し減給10分の1、6ヶ月という軽微な懲戒処分をしたに留まり刑事告訴による司直による事案究明・適正な処罰をしようとしなかった。同市から原告ら著者への謝罪は行われず、真相の究明も極めて不十分なままで図書を再購入したことで同市は全ての問題は処理済みという態度をとった。そこで原告らは、表現の自由を侵害する公務員(政治的中立性が要求される)による焚書行為という事柄の重大性に鑑み、文化的にも社会的にも許されない野蛮な焚書行為に対して各300万円づつの損害賠償譜求を提起した。同市に対しては監督責任を問う国家賠償請求(控訴蕃では共同不法行為・使用者責任を追加)、司書個人に対して不法行為を原因とする。(以上「」内は一審判決の事実認定)

争点

原告らの図書館に所蔵され現に閲覧に供されていた著書が除籍・廃秦されたことにより、思想良心の自由・表現の自由・名誉権・名誉感情・著作者人格権等が侵害されたとして損害賠償請求ができるか、原告らの被侵害利益(権利性)の有無が最大の争点。

☆地裁判決

蔵書をどのように取り扱うかは原則として被告船橋市の自由裁量にまかされているところであり、仮にこれを除籍するなどしたとしても、それが直ちにその著作者との関係で違法になることはない。

原告らの表現の自由ないしはそこから派生する権利や法的利益は、いずれも、被告船橘市の図書館が、その自由裁量に基づいて自らの責任と判断で原告らの書籍を購入し、市民の閲覧に供することとしたことによって反射的に生じる事実上の利益にすぎないものであって、法的に保護された権利や利益ということはできない。

★高裁判決

控訴人らの著作物が図書館に購入された場合でも。当該図書館ないし公務員に対し、その所蔵書籍として閲覧に供する方法については、著作権ないし署作者人格権等の侵害を伴う場合は格別、それ以外には、法律上何らかの具体的な請求ができる地位に立つまでの関係には至らない。

本最高裁判決の画期的意義

※公立図書館における蔵書の著作者が、不当に除籍廃棄(焚書)された場合には、「思想の自由」及ぴ「表現の自由」という憲法によって保障された基本的人権であること等から法的保護に値する人格的利益が認められ、国家賠償法上の保護がなされると初めて認めたものである。プライバシー権や眺望権・日照権等に並ぷ法的保護に値する人格的利益の保障拡大である。

※思想・表現の自由(憲法の要請する人権保障)拡大の点からの重要な意義

※公立図書館の持つ意義及ぴその公正な運用を、最高裁が明らかにして求めたもの

※「つくる会」が中心となって権利保障、民主主義社会の擁護を健全な司法制度が昨日して実現したもの〜上告受理申立理由書4頁では次のように主張した。
 「原判決の論によれば、全国の図書館で一斉に特定の書物が市民の目に触れぬように隠され、消されるという可能性をもたらすことになる。
 ある政治集団が陰で糸を引いて、例えぱ北朝鮮の秘密に関わる書物をいっさい除籍してしまうことが可能になる。保守政党がアカハタの関係の出版物を廃棄してもよいという思想にもつながる。相手方(司書)のように、十分の一の六ヶ月減俸の処分を覚悟すれば、簡単に図書館司書による全国規模の「歴史の抹殺」や「真実の隠蔽」が行えることになる。著作者としては自己の著書に対するそのような侵害行為に対して何らの救済手段がないこととなる。・・・」