今月の特集 029 『 小説 友情無限 』( 角川書店 )
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  今年は、中国における君主政治を打破して中華民国成立に導いた辛亥革命が勃発して100年。その記念すべき年に満を持して書き上げられたのが、『小説 友情無限』です。
 主人公は二人。辛亥革命の中心人物であり、「革命の父」と呼ばれた孫文と、もう一人は日本における映画産業の礎を築いた梅屋庄吉です。革命運動に人生を捧げた孫文に、庄吉は物心ともに手厚く支援します。「改革と発展のために身を捧げる」――今この時代、辛亥革命を材に小説を書くのならば、テーマはここにすべきだ。井沢さんはそう考えられたのだと拝察しています。
 作品には、庄吉と孫文が出会うシーンが瑞々しく描かれています。初対面の孫文に革命の決意を聞かされ、資金援助を求められた庄吉は面食らいますが、「君、挙兵 我、挙財支援(君は兵を挙げよ、我は財を挙げて支援す)」と紙に書き付け、この誓いを生涯貫きました。
 諸説あるものの、庄吉が孫文に援助した金額は、一事業家によるものとしては桁外れなものです。孫文は政治家として、庄吉は事業家として、それぞれの立場で純粋にアジアのために命を懸ける。権力欲や金銭欲が目的ではない。それでなくては国を変えることは出来ないのだ――。このことを、今の政治家、官僚、財界人、そして私たち全ての読み手に訴えるために書かれた小説であると、私は考えています。
 激動の時代を背景に、熱く純粋な友情を貫いた二人の物語を、是非堪能してください。

 
       

レビュー:
角川書店 編集局第三編集部
末安 慶子