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人はなぜ騙されるのか -投稿者: 岡島  2002-05-27 22:52:46
最近、疑似科学にはまっていて、数冊、関連図書を読んでいたの
ですが、非常に興味深い本を見つけました。
「人はなぜ騙されるのか」という本で、1996年発行、著者は
立命館大学教授の安斎育郎氏です。

それによると、「ピグマリオン効果」というのがあるらしいです。
氏によると、ピグマリオン効果とは、

『小学校の先生が「自分はこういう生徒に育てよう」と決心し、
その方針に沿って教育を展開したとしよう。生徒たちは、だんだ
んこの先生との付き合い方を心得てくる。どう振る舞えばこの先
生は機嫌がいいのか、どういう答えをするとこの先生の機嫌を害
するか。やがて要領を会得した生徒は、暗黙のうちに先生の意向
を先回りし、先生が気に入るように答えるようになる。
(中略)
生徒は、先生との軋轢を避ける便法として、先生の教育方針に従
っているように振る舞っただけで、本心からそう思っているとは
限らないのだ。先生が自らの教育方針を研究会で滔々と発表して
有頂天になっていると、後でとんだしっぺ返しを食うことにな
りかねない。
 自分で創作したクラスの教育効果に自ら惚れ込み、陶酔する。
まるで、ギリシャのキプロス島の王ピグマリオンが、象牙で作っ
た女の像に恋をした話そのものだ。というわけで、こうした現象
は「ピグマリオン効果」と呼ばれている。』(P44〜P45)
というものだそうです。

思いつくものとしては、例えばテレビの街頭インタビューで、
女子高生に「日本の総理大臣の名前はなんですか?」などと質問
した時に、聞かれたほうは、どういう返事を期待されているのか
を心得ていて、トンデモない珍回答をするというようなのがある
と思います。それに対して「近頃の若者は常識がない」などと憤
慨しては、見事に騙されたことになります。似たようなことは世
間に、非常にあふれかえっているように思えます。安易に世論操
作に引っかからないよう、気をつけたいものです。

人はなぜ騙されるのか(その2) -投稿者: 岡島  2002-05-27 22:54:01
(追記)
ところで、念のために「ピグマリオン効果」をネットで調べてみ
たら、ハーバード大学のローゼンソール博士が実験で、生徒を二
つにわけて、教師に対し、一方のグループは成績が良くなるとの
期待を持たせるようにさせると、教師が期待できると思い込んだ
グループの方が成績が向上したという現象を意味するようです。
ただし、ほかにも微妙に違うことが書いてあるのもあったので、
私はどれが正しいのかわかりません。
どなたか正解を教えてください。

それと、安斎氏は同書で、
『日本にも「七三一部隊』や「生体解剖事件」など、科学者の倫
理が問われるべき戦時下の経験があった。あれから半世紀、この
国では「南京大虐殺はデッチあげ」だの、「ホロコーストはなか
った」だの、歴史の虚実を混ぜ返す試みが依然として展開されて
いるが、過去の事実を事実として直視することからしか、未来の
共同への連帯は生じないことを今一度確認する必要があると痛感
する。』(P162)
と書いてあることも付け加えておきます。私はどうやら、今まで
騙されていたらしいのです。
 
それと、著者は超常現象を科学的・批判的に究明する学会である
ジャパン・スケプティクス会長だそうです。大槻教授も会員で
す。ホームページもあるらしいです。

最後にもう一つ。この本の発行所は「朝日新聞社」です。

人はなぜ騙されるのか(騙されました) -投稿者: 岡島  2002-05-28 23:02:31
(その3)
私は昨日、書き込みをした時点では、実はまだ、本を半分程度し
か読んでいなっかたのですが、「ピグマリオン効果」のところを
読んで、「安斎氏は、それを言うならば、まずは、それをしばしば
行っている朝日新聞に対して忠告すべきではないのか」と思って
いたのです。

その時点では、この本は、ところどころ変なことも書いてある
が、割とまともなものだと考えていました。

ところが、先を読むにしたがって、この本自体がトンデモ本であ
ることに気づきました。見事に騙されてしまいました。しかも、
かなり危険なことも書いています。

例えば、宗教と科学に関して述べているところで、空海の入定説
に対して、

『真言密教には「入定留身」といわれる奇蹟談がある。「弘法大
師は今なお生きたままのお姿で高野山の奥の院で苦しむ人々の救
済に当たっておられ、弥勒菩薩の出現を待っておられる」という
のだ。』(P66)

『この種の命題については宗教も科学を敵に回すような意固地を
張らない方がいいと思う。たとえ弘法大師の身は滅びても、大師
の思想が脈々として現代に生きているのなら何の不都合があろ
う。』(P67)

と、書いていますが、こういうのを普通、改竄といいます。科学
的でないからといって、宗教の重要な部分の解釈を変えるべきだ
という主張は、かなり倣岸な態度なのではないでしょうか。

ちなみに、空海の入定説については、空海と金属民との関係か
ら、何かの比ゆ的表現ではないかとの説も一部にあるので、単純
に荒唐無稽であると断言するのは短絡的であるのではないかとも
思います。

人はなぜ騙されるのか4 -投稿者: 岡島  2002-05-28 23:03:05
さらに、氏は、
『今西錦司氏は、前掲書(注、ダーウィン論―土着思想からのレ
ジスタンス)の中で、「科学と合わない宗教上の信仰はどしどし
廃棄されて、われわれの科学知識と矛盾のない信仰に書き改めて
ゆかねばならないのであるが、それが十分できていないところ
に、すなわち宗教と科学の分裂に、現代に生きるわれわれの悩み
の一つがある」と述べている。これは、しかし、なかなかの大問
題なのである。』(P207)(文脈からして、大問題とは、今西氏
の主張はもっともであるが、実現するのは困難だ。という意味だ
と思われます。)

また、
『六 宗教者への要望
 宗教が人々の「価値の選択」に影響力を及ぼし得るためには、
当該宗教が掲げる価値観と同じ価値観を共有する人々を大量に作
り出す必要がある。そのためには、「科学的命題」と「価値的命
題」を峻別し、現代科学が到達し得た体系的認識と矛盾する主張
は、科学の発展段階に即して大胆に再評価することが必要であ
る。それは、宗教が提起している固有の価値体系の訴求力を少し
も傷つけないであろう。』(P219)

とも書いています。

私の解釈では、これは、「宗教は科学に従属すべきである。」と
言っているに等しいと思いますが、とんでもない危険な考えだと
の印象を持ちました。

この本を表現するならば、
「詐欺師(オカルト)に騙されたので、弁護士(科学者)に相談に
行ったら、今度は弁護士に騙された」
といったところでしょうか。

科学者が書いたものが、必ずしも科学的だとは限らないというと
いう、当たり前だが、大切なことがわかる典型的な好例であると
は言えます。

もちろん、こんな科学者は一部であるとは思います。別に「きわ
どい科学 マイケル・W・フリードランダー著 白揚社」「ヒジ
ョーシキな科学 沼田寛著 ジャストシステム」も読みましたが、
こちらは大変ためになりました。

人はなぜ騙されるのか5 -投稿者: 岡島  2002-06-01 00:14:20
(しつこいようでしが、さらに続きます。
井沢氏の掲示板でこんなことを書いているのは見当違いなのかも
しれません。しかし、私は他に良い掲示板を知らないのです。そ
れと、井沢氏のような社会的影響力の強い方が、事の重要性に気
づいて、朝日を批判するのと同様、どこかの雑誌などででも取り
上げてもらえないかという微かな希望もあるからです。安斎氏は
日本における、超常現象批判の大家であり、大槻教授同様、世論
や教育界への影響力は大きく、その人自体が非科学的なことを平
気で述べていることはとても憂慮することであると私は考えま
す。)

さて、安斎氏は同書で、血液型性格について次のように書いてい
ます。
『血液型はABO式だけでなく、e式、s式、q式、Rh式、白
血球型など、三〇種類ほどもある。すべての血液型が一致するの
は九四三億分の一より小さいといわれるほどだから、自分と全く
血液型が同じ人など金輪際いないと思っていた方がいい。国際社
会では、あまり他人の血液型など聞かぬがいいだろう。プライバ
シーにかかわる余計なお節介だと思われるのが関の山だし、だい
たい日本人ほど血液型を知らない。』(P155)

これは、血液型と性格が関係ないということの説明になっていま
せん。このような事を説明するには、「厳正な調査を行った結
果、血液型と性格の間には際だつ関係は見られない」等の事実を
列挙すべきですが、そういうことは一切書かれていません。又、
科学者の立場で書くのであれば、「血液型と性格が全く関係ない
とは言い切れないが、あったとしてもそれは極微少の関係であ
り、血液型で性格がわかるなどということはありえない」という
ような記述をすべきだと思うのですが、それもありません。

人はなぜ騙されるのか6 -投稿者: 岡島  2002-06-01 00:15:41
その代わりに氏は次のようなことを書いています。
『血液型と性格に関係があると考えている学生は、人種差別意識
が強い傾向があるという調査結果もある。実体を見ないで、その
個人なり民族なりに貼られているレッテルで人間を判断するため
だろう。これもまた、現代の幻想というべきか。』(P155)

私はこの調査結果なるものに、うまく説明はできないのですがう
さんくささを感じます。この調査がどのように行われたのかを一
切書いていないので正しいのか、正しくないのかの判断が全くで
きません。私のような素人には他に確認しようにも確認できない
ようなことをさらりと書いておいて、

『科学者の言うことを点検なしに信じることは、時に危ないこと
を知る必要がある。』(P33)

などと書く氏は書いているのです。仮に字数の制限でそこまで詳し
く書くことができないのだとしても、それなら初めから書くべきで
はないと思います。

なぜならば、無批判にこれを信用すれば、血液型と性格に関係が
あると考える人間は人種差別主義者であるというレッテルを貼る
ことになる恐れがあるからです。つまり氏が批判していることを
自ら促進しているようなものなのです。それがどうやらわかって
いないらしいところが大きな問題なのです。

人はなぜ騙されるのか7 -投稿者: 岡島  2002-06-01 00:16:52
安斎氏はシミュレーション・ゲーミング学なるものについて書い
たところで、次のように書いています。

『宇宙科学者カール・セーガン博士らは、(中略)地表大気温度
の変化を追尾して「核の冬」と呼ばれるおぞましい状況の到来を
予測した。「核戦争に勝者はない」ことを示唆したこのシミュレ
ーション・ゲーミングの応用研究は、反核運動や核大国の為政者
たちの意識にも影響を与えた。(中略)
だが、こうした方法論の発展にも問題がないわけではない。
 実は、手品もいかにも本物らしく現実を模擬した技芸なのだ
が、そこに非日常的な錯誤の世界への陥穽がひそかに用意されて
いる。シミュレーション・ゲーミング手法も、そうしようと思え
ば、いかにも本物らしい装いで人々を錯誤に誘い込むためにも使
うことができる。シミュレーション・ゲーミングの倫理学が必要
とされる所以だ。』(P180〜P181)

これを普通に読めば、シミュレーション・ゲーミングは「核の
冬」などの予測に使用するのには有効であるが、イカサマに使わ
れる恐れがあると書いてあると思われます。それは全くそのとお
りだと思うのですが、氏は重大なことを書き落としています。そ
れは「核の冬」自体が科学者の間で疑問視されているという事実
です。

人はなぜ騙されるのか8 -投稿者: 岡島  2002-06-01 00:17:15
『何年にもわたって、「核の冬」の可能性、つまり超大国同士の
大量の核兵器による戦争がもたらす環境への影響をめぐって論争
がつづいていた。(中略)コンピューターと気候モデルを使った
その後の研究は、核の冬という極端な予測を支持していない。
(中略)核の冬に関する最初の計算は単純化しすぎだったことが
明らかになったが、この問題はよく言われる地球温暖化と結びつ
けられて、注目を集めつづけている。』
(きわどい科学 マイケル・W・フリードランダー 白揚社 
P137〜P138)

もちろん私は核戦争など起こってほしいとは思っていません。ま
た、「核の冬」は否定されても、これがきっかけとなって核の恐
ろしさが世界に知られることになり、核兵器削減が進展したこと
も否定しません。またセーガン博士が意図的にこのような結論を
導き出したというつもりもありません。

しかし、平和学・放射線防護学を専門とする安斎氏がこのことを
知らないはずはないのです。なぜ氏はそれを書かなかったのでし
ょうか。そこに氏のうさんくささがあるのです。氏が批判してい
る超能力者や霊媒師とやっていることに違いがないのです。

人はなぜ騙されるのか9 -投稿者: 岡島  2002-06-02 13:07:07
(つづき)同書にはまだまだ変なところがあります。
『同氏(東京工業大学教授、桶谷繁雄氏)が「オカルト」騒動を
科学的に分析しようとした姿勢は評価できるが、その原因を「死
への恐怖心」に帰するのは単純にすぎる。オカルトに振り回され
る若者たちは「死の恐怖」からは最も遠いのだ。』(P69)

若者が「死の恐怖」から最も遠いとは、どういう根拠があっての
ことなのでしょうか。私の場合は小学生の頃が一番、死を恐怖と
して感じていました。

『世の中「霊」に惑わされている人は多い。こっくりさん占いの
果てに「悪霊」に取り憑かれた中学生、「心霊治療」に何百万円
もの金を貢ぐ病者、「霊視」番組に何千万円もの制作費を投じて
いるテレビ局。』(P212)

テレビ局を悪霊に取り憑かれた中学生と同列にしているのはおか
しいのではないでしょうか?

まだありますがやめておきます。

さて、「きわどい科学」には以下の記述があります。
『しばしば魅力的でもっともらしくもある疑似科学に対し、けっ
して終わることのないキャンペーンを繰り広げていくうえで、科
学者たちが採用しなければならない戦術や警戒事項がいくつかあ
る。
・ 批判は一〇〇パーセント正確でなければならない。頭に
血が上った科学者が間違いを犯して、それがその後の議論の焦点
になってしまい、本来の主題から注意が逸れてしまうことがあま
りに多すぎる。ちょっと間違っているところはあるけれど大きな
反撃を加えたことになるより、完全に正確であるほうが望まし
い。(以下略)』(P357)

人はなぜ騙されるのか10 -投稿者: 岡島  2002-06-02 13:07:43
科学ジャーナリストの久保田裕氏は『日本の「超常現象ある・な
い論争」はなぜ退屈か(朝日ワンテーママガジン28 1994年)』


『超常現象肯定派が非科学的なことを言うのは。まあ仕方のない
ことかもしれない。しかし、いつもは「科学が服を着て歩いてい
る」といった感じの先生方が「超常現象ある・ない」を論じ出す
と途端に頭に血が上り、どっちが科学者か非科学者か分らなくな
るようなことを口走り始めるのは困ったことだ。』と批判してい
ます。

米国にはCSICOP(サイコップ)「超常現象主張の科学的調
査委員会」という団体があります。久保田氏は、

『サイコップの結成で、米国の「超常現象ある・ない論争」は不
毛な哲学論争の次元を抜け出し、実証性をキーポイントとする新
たな戦いの段階に突入した。いまだに「あるもーん」「ないもー
ん」とたいした根拠もなしに言い合っている日本は、米国に比べ
二十年近く遅れを取っていると言ってもいいだろう』と書いてい
ます。

安斎氏が会長をしている「ジャパン・スケプティクス」はサイコ
ップの姉妹団体なのですが・・・かつて副会長をしていた大槻・
プラズマ・義彦教授(休業中とか)ともども、このような人たち
がオカルト批判の前線で活躍していては、この問題は前進するど
ころか、むしろ混乱に陥ってしまうように思えます。良識ある科
学者にぜひ頑張っていただきたいものです。(終わり)

Re:人はなぜ騙されるのか -投稿者: いし  2002-06-19 09:27:08
岡島さんが、「騙す人がいるから気を付けよう」とおっしゃっているのはとても
良く分かります。
しかし表題の、「人はなぜ騙されるのか」の答には辿り着いていないような気が
するのですが、その点についてはいかがでしょうか?

Re:人はなぜ騙されるのか -投稿者: 岡島  2002-06-24 20:37:43
「人はなぜ騙されるのか」は私の批判している本の題名です。

私の興味はどちらかというと、「人はなぜ騙されるのか」ではな
く、「ムー」とかならともかく、安斎育郎氏や小和田哲男氏の
ような立派な大学の先生たちの著書(それも専門分野の)に、
なんで明らかに非論理的なことが書いてあるのかということと、
彼らに対する批判がなぜもっと出てこないのかということです。